不動産売買の電子契約はいつから?メリット・デメリットも詳しく解説 

不動産売買の電子契約はいつから?メリット・デメリットも詳しく解説 

(令和4年5月17日更新)

本記事は不動産売買における「電子契約」について解説しています。

さまざまな業界で電子契約が導入されている中、不動産業界の電子化は遅れを取っている状況です。

そんな不動産業界における電子契約はいつから導入されるのか?

また、電子契約を導入して受けられるメリットや、デメリットについてもご紹介していきます。

■不動産売買の電子化は2022年5月

不動産売買における電子契約の導入は、2022年5月までに解禁される見込みです。



これは、2021年5月に国会で成立した「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」からきています。



同案は2021年5月19日に公布され、準備期間を含めて1年以内に施行される見通しであることから、2022年5月中が期限の目安です。



要するに、同案には「宅地建物取引業法」の改正も含まれているため、同案が成立することで不動産売買における電子契約が可能な法整備がなされます。




実は「売買」とは本来、契約書が無くても成立するものです。


スーパーやコンビニで買い物をするのに契約書を交わしません。

極論をいえば、契約は「口約束」でも成立しますが「証拠」がないのが問題です。



特に金額が大きいほど、その証拠はしっかりと残しておく必要があるため、不動産売買における契約書は必須だといえます。



売主・買主が仲介業者立ち会いのもと、対面で契約して署名捺印を交わす。

これが、当然に行われていた不動産売買契約ですが、脱ハンコ・ペーパーレス社会が進む世の中において、ついに不動産業界にも変化の波がきます。




■不動産売買の電子化はなぜ遅い?

これまでの慣習を大きく変えることになる2022年の法改正。


すでに電子契約が導入されている業界も多い中、なぜ不動産業界はここまで遅れをとっているのでしょうか?



次に詳しく解説していきます。



37条・35条書面押印と書面の交付義務

37条・35条書面の交付と、宅建士による押印の義務が、電子契約の導入が進まなかった大きな要因です。

37条書面と35条書面

宅建業法37条書面=不動産売買契約書

宅建業法35条書面=重要事項説明書



37条書面はいわば「約束」で、35条書面は「重要告知」であるため、その責任の大きさから、書面の交付と押印は当然の義務とされてきました。

しかし2022年の法改正では、上記の押印および書面の交付義務が廃止されます。

現代においては、書面の交付や押印にこだわらずとも、十分に責任の担保は可能であるという判断といえるでしょう。

また「署名」についてはオンライン署名があるため、併用することで不動産売買契約の電子化がいよいよ現実のものとなります。

旧態依然とした業界体質

不動産業界は旧態依然とした体質が根強いことでも知られています。

他の業界においてもいえることですが、IT化の波に対しての腰が重い勢力が幅をきかせている側面は否定できません。

また、オンラインシステムについてもあまり快適とはいえないといえます。

例えば、不動産業界経験者なら知らない人はいない「レインズ」についても、一体どうすればこんなに使いにくくできるのか?というほど使い勝手が悪いシステムです。

ちなみに最近まで、推奨ブラウザはInternet Explorerのみでした。

レインズは2022年1月に新システムにリニューアルされたのですが、突っ込みどころの多い仕上がりの印象です。

ここでレインズについての詳しい説明は割愛しますが、某不動産ポータルサイトなどは非常に直感的で扱いやすいものが多いなか、やはり時代に対応しきれていない感があります。

今回の法改正をきっかけに、不動産業界にも大きな世代交代の波が起こることを願うばかりです。

プロセス・ルールの見直しが必要

電子契約の導入には、プロセスやルールの見直しが必要です。

電子契約に対応したITシステムの導入もしなければならず、逆に対応しきれない会社も出てくることでしょう。

このように対応ができない会社が多いほど、電子契約自体が浸透しないケースが考えられます。

そのため、せっかく法改正によって電子契約が導入されても、フル活用できない事例が多発すると予想できるでしょう。

業界全体が直ちに導入できるようなシステムとルール作りが今後の課題です。

■電子契約のメリット

次は、不動産売買における電子契約のメリットについてご紹介していきます。

書類管理のしやすさ

前述のように契約書などの書類を印刷する必要がないことから、書類データの管理が容易になります。

同時に、紙書類を保管する場所も必要なくなるため、オフィススペースの有効活用ができることは、大きなメリットの一つといえるでしょう。

来店や訪問の手間が省ける

売買契約における来店や訪問といった手間も省けることもメリットに挙げられます。

自宅などにオンラインがあれば、売主買主共に移動の手間を省いて契約でき、不動産仲介会社なども訪問の手間がかからず、経費の削減も可能です。

一度システムさえ完備すれば、契約にかかる準備や所要時間も劇的に減ることでしょう。

印紙税がかからない

不動産売買契約においては、売買金額に応じて定められた印紙代がかかりますが、電子契約では印紙代はかかりません。

印紙税などについては、以下の記事をご参考ください。



同じ契約内容にもかかわらず、紙の契約書には印紙が必要で、電子契約では印紙が不要という、何とも首を傾げたくなる内容ですが、2022年3月時点においてはこの解釈で問題ありません。


電子契約は課税文書を作成したことにはあたらないため、印紙税はかからないという国税庁の見解なのですが、この点については今後改正の可能性はあるでしょう。

■電子契約のデメリット

次は不動産売買における電子契約のデメリットを紹介します。


これらのデメリットはかなり重要な点であり、今後の重要な課題となるでしょう。


以下の3点について解説します。



通信環境を整える必要がある

電子契約を円滑に行うための通信環境が必要です。

不動産会社側はビジネスとして必要なため、万全に導入するのは当然といえますが、顧客の立場はそうではありません。

顧客の自宅などに完備されているインターネット環境が、電子契約をスムーズにできる環境とは限らないといえるでしょう。

そのため、いくら不動産会社側の環境を整えても、顧客側の通信環境の不具合によって、電子契約が上手くいかないことも予想されます。

今後の電子契約にあたっては、上記の点がデメリットになる可能性が考えられるでしょう。

対応できない人もいる

そもそも電子契約に対応できない人も出てくる可能性があります。

システムの使い方がわからず、上手く接続できないなど電子契約がスムーズに行かず、普通に対面で契約したほうが早く済むこともあるでしょう。

この点も踏まえて、電子契約・対面契約のどちらにも対応ができるように環境を整えておくことが必要といえます。

サイバー攻撃やデータ消失のリスク

サイバー攻撃やシステム障害によってデータが消失するリスクも考えられます。

印刷文書であれば影響は受けませんが、データのみであれば上記のデメリットを受ける可能性があるでしょう。

また、データで保管することに慣れていない顧客の場合、データの保管先がわからなくなることも予想されます。

結局、電子契約したデータを印刷して保管するのが無難かもしれません。

■不動産売買の電子化は誰のため?

不動産売買の電子化は顧客のためでもあり、業界のためともいえます。

しかし、印紙代がかからないことや移動の手間がかからずに契約を完了できる点は大きなメリットですが、通信環境の問題や、電子契約自体に抵抗を示す人は一定数いるでしょう。

そのため、顧客のための電子契約なのであれば、売買契約の方法を選択制とすることが、一番の解決策といえます。

「DX化」がキーワードとなっている現代において、電子契約は今後の不動産業界を大きく変えるきっかけとなることは間違いありません。

とはいえ、顧客のニーズに応えてこそ、DX化の意義があるともいえます。

ちなみにDXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、トランスフォーメーションとは「変容」という意味です。

また、DX化とIT化は似ていますが意味は違います。

ITとはアナログなものがデジタルへと置き換わること自体を意味しているため、ITは「手段」でDXは「目的」と解釈できるでしょう。

不動産業界は電子契約におけるDX化に向けて、段階的なロードマップを歩んできています。



不動産業界の電子契約化までの歩み

2017年10月 賃貸仲介のIT重説を本格的に開始

2021年4月   売買仲介のIT重説を本格的に開始

2021年5月   デジタル改革法案の成立(宅建業法改正)

2022年5月   電子契約の全面解禁


上記のロードマップは、顧客や不動産会社にとってのメリットを実現するためのDX化(手段)として、進められています。

一方、デメリットにおける課題はまだまだありますが、不動産業界がさらに進化・活性化することに期待です。

■まとめ

今回は不動産の電子契約について解説してきました。

不動産業界のDX化が遅れている理由や、電子契約におけるメリット・デメリットについて、理解を深めていただけたならば幸いです。

不動産の電子契約についてはすでに法案が成立し、全面解禁待ちの状態

35条・37条書面の交付・押印義務があったため電子契約が進まなかった

電子契約には、通信環境の完備や運用方法など課題は多い

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