【不動産の減価償却費】定額法4つの手順や簡便法についても解説

【不動産の減価償却費】定額法4つの手順や簡便法についても解説

(令和4年5月13日更新)

不動産投資について調べていると「減価償却」という言葉をよく耳にするのではないでしょうか?

本記事では不動産における減価償却についてわかりやすく解説します。

これから不動産を購入して不動産投資を考えている人は、ぜひご参考ください。


■不動産の減価償却とは?


「減価償却」とは、建物や車両などの「固定資産」の価値を、一定年数に分けて経費に計上する仕組みのことです。

「減価」つまり年数が経てば劣化する固定資産が、減価償却の対象となります。

したがって不動産における減価償却は、建物のように劣化しない「土地」は対象外です。

また、減価償却の目的を要約すると、

減価償却の仕組み

不動産購入にかかった費用を分割して毎年(一定年数)の経費に計上する



帳簿上の利益が上記の年数分減らせる



減らせた分節税ができる


減価償却は、実際にはキャッシュフローが出ていても、帳簿上は赤字にすることもできるため、実際の支出を伴わない経費といえます。

次は、不動産における減価償却の計算方法について、順を追って解説していきしょう。


■不動産の減価償却計算4つの手順


減価償却の計算方法には以下の計算方法があります。

計算方法

1.定額法

2.定率法



ただし平成28年の税制改正によって、建物・付属設備などに対する「定率法」は廃止されました。

そのため、本記事のテーマである不動産の減価償却において用いられる計算方法は「定額法」です。



ここからは、定額法における減価償却費までに必要な4つの手順を解説していきます。


①取得費用を算出

まずは「取得費」を算出しましょう。

なお、一般的には取得費=購入価格と読み替えても差し支えありませんが、購入価格には「土地代金」が含まれているため、減価償却における取得費は土地代金を除外しなければいけません。

では、土地と建物の内訳はどのように算出するのかといえば、売買契約書などにあらかじめ明記しておくのが望ましいです。

内訳の記載がなく不明の場合は「固定資産税評価額」を参考にして、土地と建物の割合を按分にして算出します。

ただし固定資産税評価額の場合、土地の割合が高くなっているケースもあり、建物の取得費相当分が低くなることがある点に注意しましょう。


計算例

取得価格:8,000万円

【固定資産税評価額】
土地3,000万円
建物2,000万円(6:4)
(上記割合の土地6:建物4に基づき、取得価格を以下に按分)

土地:8000×0.6=4,800万円
建物:8000×0.4=3,200万円

取得費:3,200万円

②建物の耐用年数を算出

次は建物の耐用年数を計算しましょう。

耐用年数は減価償却できる期間(年数)を決めるために必要です。

以下は耐用年数の一覧表となります。

https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/shisan/info/hyo01_01.pdf

機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表
東京都主税局



かなり細分化されていますが、一部を抜粋すると以下のとおりです。

構造法定耐用年数
木造22年
軽量鉄骨造19年
鉄骨造34年
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
鉄筋コンクリート造(RC造)
47年




購入する建物の構造に対応する耐用年数がわかれば、次にいきます。


③建物の償却率を算出

次は、減価償却費の計算を出すための「償却率」を割り出します。

償却率は以下のとおりです。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_02.pdf

償却率償却資産の償却表
国税庁

なお、計算にあたっては上記の償却表内の左欄(旧定額法・定額法の償却表率)を参考にしましょう。

例えば耐用年数22の場合の係数は「0.046」です。


④定額法「取得費用×償却率」で算出

ここまでの手順どおりに取得費用と償却率がわかれば、定額法による減価償却費が算出できます。

計算式

取得費用×償却率=減価償却費



上記の計算式にあてはめて計算してみましょう。

計算例

取得価格:3,200万円

法定耐用年数:22年

償却率:0.046

3,200万円×0.046=減価償却費1,472,000円



この計算例の場合、取得した建物は毎年1,472,000円ずつ価値が下がっていき、22年後に価値がゼロになるという計算になります。

毎年1,472,000円を経費として22年間計上できるわけです。


中古物件は簡便法で算出

ここまで、定額法による減価償却費の計算方法をご紹介してきましたが、中古の投資不動産を購入する場合においては「簡便法」が適しています。

中古不動産を購入後に前述の法定耐用年数を適用する場合、経過年数による調整ができません。

そのため、新築不動産においては「定額法」中古不動産においては「簡便法」で計算するのは妥当といえるでしょう。

簡便法を用いる場合には、購入不動産が法定耐用年数内か否かで計算方法がわかれます。

それぞれの計算例は以下のとおりです。

法定耐用年数内の建物の計算式

(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%

計算例

取得価格:3,200万円

構造:RC造築年数:20年

(47年−20年)+20年×20%=減価償却期間31年

3,200万円÷31年=約103万円

年間約103万円を31年間経費計上できる



法定耐用年数超過建物の計算式

法定耐用年数×20%

計算例

取得費:1,500万円

構造:木造

築年数:30年

22年×20%=減価償却期間4年(1年未満は切り捨て・2年未満は2年)

1,000万円÷4年=250万円

年間250万円を4年間経費計上できる



減価償却費は、実際の支出を伴わない経費を作ることができます。

購入不動産の取得費および償却期間によって、長期または短期の節税の調整が可能なため、うまく活用しましょう。


■不動産の減価償却におけるよくある質問


ここまで、不動産の減価償却について解説してきましたが、減価償却におけるよくある質問を3つピックアップしてみました。


不動産の減価償却が不要なケースは?

減価償却が不要なのは、自宅として不動産を利用している場合です。

自宅として利用するのに「経費」という概念はそもそもありません。

反対に、減価償却が必要なケースについても念のため確認しておきましょう。


減価償却が必要なケース

①家賃収入がある場合

②賃貸不動産を売却する場合



減価償却の目的は経費計上のため、①のように家賃収入がある場合には必須といえます。

②の場合、譲渡所得税の課税額計算における「取得費」を算出する際に、減価償却費を差し引いて計算しなければならない点に注意しておきましょう。


土地と建物の割合の限度はある?

土地と建物の割合については、明確な定義がありません。

そのため「常識の範囲内」で定めることになります。

とはいえ減価償却においては、同じ不動産価格でも建物相当分が高いほうが、その恩恵を受けられるため、購入する側にとっては建物価格を高く設定したいでしょう。

しかし、仮に建物を高く設定したとしても税務署に否認されるケースもあるため、やはり実態に即した配分が望ましいといえます。

さらにいえば、不動産会社が売主の不動産を購入する場合、土地建物の内訳に関する利害は完全に反比例する点は押さえておきましょう。

不動産会社が売主の場合、建物について消費税を納める必要があるため、同じ金額で売却をしても建物相当額が高いほど消費税額が上がるため、単純に利益が減るためです。

この場合、不動産会社の立場からは前述の固定資産税評価額による按分を勧めてくることでしょう。

上記のケースについては、あくまでも常識の範囲内で不動産会社とよく話し合って定めるようにしましょう。


おすすめしない減価償却の方法は?

減価償却の観点からいえば、新築のワンルームマンションにはあまり減価償却のメリットはありません。

手頃な価格で、新築のため融資がつきやすいといった理由からサラリーマンの投資デビューに選ばれがちな新築ワンルームマンション。

減価償却においては・・・

・耐用年数が長いため、年間の減価償却費が少ない

・効果があるのは「諸費用」計上できる初年度のみ



上記の理由から、減価償却による節税効果は低いといえます。

初年度については登記費用などの諸費用を計上できるため、一定の節税効果は望めますが、2年目以降には諸費用計上もないため、家賃収入による納税が発生する可能性が高いです。

また、新築ワンルームマンションは購入した直後に3割程度価値が下がることも覚悟しておかなければなりません。

新築から中古になってしまうことと、手頃な価格とはいえ、評価の面ではかなり割高な物件が多く、相当な利益が乗せられている物件がほとんどです。

また、上記に加えて減価償却による簿価の減少によって、売却時に多額の譲渡所得税がかかる可能性があります。



■まとめ

ここまで、不動産における減価償却について解説してきました。

計算方法と仕組みについて、なるべくわかりやすく解説したつもりなのですが、参考になりましたでしょうか?

少しでもお役に立てれば幸いです。

【本記事のまとめ】
・新築は「定額法」中古は「簡便法」にて計算

・減価償却により、譲渡所得税が高くなるケースに注意

・新築ワンルームマンションはおすすめしない

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