住宅ローンが払えない!滞納した時の対処法や注意点を教えます

住宅ローンが払えない!滞納した時の対処法や注意点を教えます

(令和4年5月13日更新)

失業や病気など、さまざまな理由によって生活および収入の変化が起こることで、住宅ローンが払えなくなる可能性があります。

それは、住宅ローンを抱える全ての人にとって他人事ではなく、誰にでも起こり得るといえるでしょう。

本記事では、住宅ローンが払えないとどうなるのか?

また、住宅ローンが払えない場合の対策と注意点についてご紹介します。


■住宅ローンが払えないとどうなる?

住宅ローンが払えない場合、金融機関からの督促に始まり、払えない期間に応じて状況が移り変わっていきます。


住宅ローンを滞納すると

・金融機関からの督促状

・金融機関からの催告状

・期限の利益喪失通知

・競売開始通知決定

・開札~立ち退き

主に上記の流れで家を手放すこととなるわけですが、住宅ローンが払えなくても、せっかく購入した家を何とか守りたいと考えるのが人情です。

次は、段階に応じた対策について解説していきます。


■住宅ローンが払えない場合の対策


住宅ローンが払えない場合には、状況に応じた対策を講じる必要があります。

段階に応じた適切な対策を取ることによって、状況が好転した際のリカバリーもスムーズになるため、以下6つの対策をご参考ください。


借り換えを検討する

第1段階として、住宅ローンが払えなくなる前に借り換えを検討しましょう。

高い金利で住宅ローンを組んでいる場合、借り換えで金利を下げることができれば、それだけでも返済額の負担を減らせる可能性があります。

例えば3,000万円を金利2%、35年ローンで組み、2,500万円の支払いが残っている場合で考えてみましょう。

上記の場合、月々の返済額は約10万円です。

次に残債の2,500万円を借り換えた場合で考えてみましょう。

返済期間金利1.5%の場合金利1%の場合
20年120,637円114,974円
25年99,985円94,219
30年86,281円80,410円
35年76,547円70,572円

上記のケースであれば、住宅ローン返済可能年数の完済年齢80歳で逆算して、30年以上の借り換え期間がとれれば、返済額を減らすことができます。

仮に35年の1%で借り換えできれば、月々約3万円(年間36万円)の返済を減らせるため、借り換えのメリットは大きいといえるでしょう。

ただし、借り換えにも「諸費用」がかかります。
以下は諸費用の目安です。

借入額2,500万円・35年ローンの場合の例

・銀行保証料:約50万円

・印紙代金 :約2万円

・事務手数料 :  3~5万円

・繰上返済手数料:1~2万円

・登記費用 :約15万円


※繰上返済手数料は、インターネットであれば無料の金融機関もあります。

※登記費用については登録免許税+抵当権抹消費用+司法書士報酬で構成されており、上記例は登録免許税90,000円、抵当権抹消費用1,000円、司法書士報酬60,000円での概算額です。

※銀行保証料は「内枠方式」を選択することで諸費用としては不要になりますが、金利が0.2%前後上乗せされます。

上記のように、借り換えには諸費用かかるため、借り換えは資金にわずかでも余力があるうちにすべきといえるでしょう。

また、住宅ローンが払えなくなって実際に延滞が始まると、個人信用情報に反映されてしまうため、そもそも借り換えの審査に通らなくなってしまいます。

そのため借り換えは、住宅ローンが払えなくなる前にできる最善の策といえるため、早めに動きましょう。

金融機関にリスケの相談をする

諸事情により借り換えが難しい場合、次の段階として金融機関にリスケを申し出ましょう。

リスケとは「リスケジュール」の略で、住宅ローンにおいては「返済計画の見直し」を意味します。

見直しといっても、住宅ローンのリスケは長期的なものではなく、短期的な返済額の減額相談です。

その期間は1年単位でされることが多く、返済額については元金を据え置き、金利のみを支払う場合が一般的でしょう。

例えば返済額が10万円で、そのうち返済元金が8万円の場合、金利相当分にあたる2万円の返済のみ行うといった具合です。

上記を1年または2年といった期間で区切って、金融機関と都度協議しながら返済を続けていくわけですが、あくまでも一時的な措置であるため、今後の見通しが重要といえます。

上記のリスケ期間に、返済計画やその他の支払い(生命保険や通信費など)を見直し、リカバリーができるケースもあれば、どうにもならないケースもあるでしょう。

リカバリーが難しい場合は、次の段階を考える必要があります。


住宅ローン特則付個人再生

リスケの期間内で生活の立て直しができなかった場合でも、最悪住宅ローンだけは払っていくという選択肢として「住宅ローン特則付個人再生」があります。

個人再生とは、債務整理によって債権者と協議して借金を減額することです。

住宅ローン特則とは、住宅ローンはこれまで通り支払い、その他の借金は圧縮することができるため、家を守るという意味では有効な選択といえるでしょう。

ただし、あくまでも住居として利用している家の住宅ローンが対象である点には注意です。

そのため、投資用ローンなどは対象外となります。

これでもリカバリーが難しい場合は、次の策を講じましょう。


自宅を売却して賃貸に移る

思い切って自宅を売却して賃貸に移るのも選択肢の一つです。

条件次第では、現金を残して住居費も減らせる一挙両得状態になる可能性もあります。

自宅の売却によって

・引越しにかかる費用が確保できる

・引越し先に、条件に見合う賃貸がある

・住宅ローンが完済できる

上記の3つを満たすことができるのであれば、検討の余地は十分にあるといえるでしょう。


ハウスリースバックを利用する

ハウスリースバックを利用することも選択肢です。

ただし、住宅ローンが払えない状況において、筆者はハウスリースバックを推奨はしません。

理由は後述しますが、まずはハウスリースバックとは何かを簡単に解説します。

ハウスリースバックとは、自宅を売却しても住み続けられるとの触れ込みで話題になっている不動産売却方法です。

買取業者に自宅を売却し、退去せずに買取業者とそのまま賃貸借契約を結びます。

上記賃貸借契約には、最大10年後に自宅を買い戻すという特約を付け加えて、2年前後ごとに契約を更新する形です。

ハウスリースバックのメリット

・近所に知られずに売却ができる

・売却後も賃貸として住み続けられる

・一定期間後に買い戻すこともできる

ハウスリースバックの代表的なメリットは上記の3つといわれていますが、住宅ローンが払えない状況において、ハウスリースバックはデメリットが非常に多いため、おすすめしません。

理由は以下のとおりです。

ハウスリースバックのデメリット

・賃料の支払いが滞ると、買戻し特約が消滅する

・賃料の支払いが滞ると、賃貸の更新ができない

・買取価格が非常に安い

・高い家賃設定になる可能性が高い

上記のとおり、住宅ローンが払えない状況を解決したいのにもかかわらず、賃料設定は安くないため負担はそれほど変わらないばかりか、場合によっては増えることもあります。

さらに賃料を滞納してしまうと、買戻しはおろか、賃貸の更新も拒絶されることもあるため、不動産を安く手放して自宅も追い出されるという本末転倒な状況にもなりかねなません。

そもそも、売却にあたっては住宅ローンの抵当権抹消が必要なため、ハウスリースバック業者に安く売却できるということは、住宅ローンの残高はそれほど多くない状況といえます。

そのため、逆にいえばハウスリースバック業者には売らず、もっと高く売りに出して手元に資金を残すこともできるわけです。

ハウスリースバック業者は相場よりもかなり安く買い取るため、いつ売却しても利益が出る上、その間は賃料収入が入ります。

さらに、賃料の延滞が起これば賃貸の更新をせずに入居者を追い出し、直ちに売却すればよいだけで、ハウスリースバック業者は一切のリスクを負いません。

したがってハウスリースバックは、自宅に住み続けたい、近所に知られたくないという人の心理を巧みに利用しているといえます。

今の自宅に住み続けなければならない理由はなんでしょうか?

一度落ち着いてゆっくり考えてみましょう。

近所に知られたくない理由は?

どちらの理由も、多くは「世間体」ではないでしょうか。

いくら世間体を気にしたとしても世間が助けてくれるわけではなく、住宅ローンが払えない問題は自分で解決しなければならないことを今一度考えましょう。

引っ越すことで立て直せる生活もあり、意外に住みよい地域はたくさんあります。

子供のことを考えて引っ越せないと考える人も多いでしょうが、子供は親以上に適応能力も高く、たくましいものです。

世間体とともに自宅を手放すことで、見えてくる景色もあるかもしれません。


割り切って住宅ローンを滞納する

さまざまな策を講じてもなお、住宅ローンを払えない問題が解決しない場合には、中途半端に支払いを続けるよりも、割り切って返済を止めてしまいましょう。

返済分を当面の生活費に充てながら、次の展開を考えて行くほうが得策といえます。

なお、冒頭のとおり住宅ローンの滞納を続けると、債権者による抵当権の行使がなされ、最終的には「競売」です。

また、競売になる前に「任意売却」が成立する場合もあり、詳しい流れについては下記記事をご参考ください。




■住宅ローンが払えない場合の注意点

住宅ローンが払えない場合において、注意しなければならないポイントがあります。

本記事では主な3点についてご紹介します。

金利優遇・団信の失効

住宅ローンの滞納から早くて3ヵ月、遅くとも6ヵ月を目安として、金融機関から「期限の利益喪失」にかかわる書面が自宅に届きます。

期限の利益喪失とは、簡単にいえば住宅ローンを分割払いで返済する権利です。

つまりその権利を失い、一括返済を迫られます。

期限の利益を喪失すると、それまで受けていた金利優遇や団信が失効する点に注意しましょう。

つまり上記の状態で万が一、住宅ローン名義人が死亡または高度障害になった場合でも、団信による弁済はなされず、住宅ローンは残ることになります。


遅延損害金の計算方法の違い

住宅ローンが払えないと遅延損害金がかかります。

一般的な遅延損害金は年利14~20%前後が一般的ですが、期限の利益喪失の前後によって、計算方法が変わる点に注意です。

例えば住宅ローン残債が3,000万円、月々の返済額が10万円、滞納期間6ヵ月、遅延損害金年率20%の場合で考えてみましょう。

期限の利益喪失前

①10万円×20%×30日÷365日=1,644円

②20万円×20%×30日÷365日=3,288円

③30万円×20%×30日÷365日=4,932円

④40万円×20%×30日÷365日=6,575円

⑤50万円×20%×30日÷365日=8,219円

⑥60万円×20%×30日÷365日=9,863円


6ヵ月合計遅延損害金34,521円


期限の利益喪失後

3,000万円×20%×180÷365=

6ヵ月合計遅延損害金2,958,904円

上記のように、期限の利益喪失前後は遅延損害金にここまでの差が出ることがわかります。

したがって、期限の利益を喪失した段階で、一括返済額は本ケースにおいても約3,300万円にのぼるため、任意売却および競売への移行は避けられないと考えるべきでしょう。


個人信用情報への掲載

住宅ローンが払えなくなると、個人信用情報に滞納情報が掲載されます。

また、任意売却および競売でも住宅ローンの返済分は残るため、これらを完済するまでは個人信用情報の返済事故情報は消えません。

正確には、完済後5年を経過するまでは上記事故情報は消えないため、クレジットカードの申込みなどの審査に通らないといった影響は避けられないことを覚悟しましょう。

とはいえ最近では、銀行口座残高と紐づき、利用直後に引き落とされる「デビットカード」があるため、意外に不便は感じないかもしれません。

ちなみに、多くのデビットカードはクレジットカードとは違い、お金を借りないため審査がないので、仮に自己破産をしたとしても所有できます。


■まとめ

本記事では住宅ローンが払えない場合に起こることや、対策方法についてご紹介してきました。


さまざまな理由によって生活が突然変化することは、誰に起こっても不思議なことではありません。


借りたお金は返すものではありますが、返せないものはどうしようもなく、一番大切なのは自分と家族の生活です。


借金を返せないからといって気に病むことは一切ありません。


良い意味で鈍感になることで、一日でも早く生活を立て直すよう努めましょう。


【本記事のまとめ】
ハウスリースバックはおすすめできない

期限の利益喪失後の状況変化に注意

策を講じても無理なら直ちに返済を止める



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