(令和4年5月20日更新)
本記事では所得の種類について解説しています。
所得税法における「所得」の種類は複数にわたっており、個別に税率や計算式が設定されており、非常に複雑です。
今回は「所得」について解説するとともに、その種類や特徴についても併せてご紹介します。
■所得とは?
所得とは一年間に得た「収入」から、収入を得るためにかかった「経費」を差し引いた金額のことです。
収入−必要経費
上記は、一般的によく言われる「手取り」とは違います。
手取りとは所得から税金や健康保険料などを差し引いた金額のことです。
所得−税金や健康保険料など
これらは、実際に支払うことになる税金の計算における基本的な考え方となりますので、収入・所得・手取りの意味について混同しないようにしましょう。
■所得は全部で10種類
所得は10種類に分けられています。
所得の種類 | 特徴 |
給与所得 | 勤務先から受ける給料・賞与による所得 |
事業所得 | 小売業・サービス業・農業・漁業・小売業・製造業などの事業による所得 |
譲渡所得 | 土地・建物・ゴルフ会員権などを売却して得た所得 |
一時所得 | 営利を目的とせず、労務や役務の対価でもにない所得 |
退職所得 | 退職によって勤務先から受ける退職金や、厚生年金基金の一時金などの所得 |
山林所得 | 山林を伐採または立木のままで譲渡して得た所得 |
不動産所得 | 不動産の権利によって得た所得(賃料など)や、船舶や航空機の貸付け得た所得 |
配当所得 | 株主や出資者が法人から受ける配当や、投資信託などの収益分配によって得た所得 |
利子所得 | 預貯金や公社債の利子、公社債投資信託などの収益の分配によって得た所得 |
雑所得 | 上記のいずれも該当しない所得 |
所得は、上記10種類のいずれかに必ず分類されるようになっています。
なお、これら10種類には微妙な分類がある点に注意です。
例えば所有する不動産を人に貸して得た賃貸収入は「不動産所得」ですが、所有する不動産を売却して得た収入は「譲渡所得」です。
また、山林を売った場合は譲渡所得ではなく「山林所得」となります。
さらにいえば、不動産仲介業における仲介手数料として得た所得は、不動産所得ではなく「事業所得」です。
非常に複雑で理解に時間のかかる「所得」の定義ですが、なぜこんなに細かく分ける必要があるのでしょうか。
次に解説していきます。
■所得を分類する意味
・所得税を適切に課税するため
・総合課税と分離課税に分類するため
主にこの2点に絞ってご紹介していきましょう。
所得税を適切に課税するため
所得の区分に対して、それぞれ定められた計算式に基づいて所得税が課されます。
10種類の所得の計算方法は以下のとおりです。
所得の種類 | 所得の計算方法 |
給与所得 | 収入金額(源泉徴収前の金額)−給与所得控除額 |
事業所得 | 総収入金額−必要経費 |
譲渡所得 | 収入金額−取得費−譲渡金額 |
一時所得 | 総収入金額−収入を得るために支出した−特別控除額(最大50万円) |
退職所得 | (退職金収入−退職所得控除額)×1/2 |
山林所得 | 総収入金額−必要経費−森林計画特別控除−特別控除額(最大50万円) |
不動産所得 | 総収入金額−必要経費(修繕費用、減価償却費など) |
配当所得 | 収入金額−株式などを取得するために要した借入金の利子 |
利子所得 | 利子等の収入金額(源泉徴収前)がそのまま所得金額となる |
雑所得 | 公的年金等:収入金額−公的年金等控除額その他:総収入−必要経費 |
上記の区分に応じて算出された所得金額を「課税所得金額」として、以下に応じて課税される所得税が決定されます。
所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
引用元:国税庁
引用URL:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
ただし上記の表は、後に解説する「分離課税」などを除いた区分に対して適用される税率です。
また、上記所得税の最大税率は45%ですが、住民税10%も課税されるため、実質的な最大税率は55%となります。
総合課税と分離課税に分類するため
10種類の所得区分は大きく2つに分けられ、それぞれの課税方法が適用されます。
・総合課税
総合課税は、該当する所得を合計して計算します。
また、総合課税については基本的に前述の表「所得税の速算表」よって求められます。
ただし一部例外もありますので注意しましょう。
総合課税に分類される所得は以下の通りです。
・給与所得
・不動産所得
・配当所得(分離課税になるものや、確定申告をしない選択をしたものなどは例外)
・譲渡所得(ゴルフ会員権など)
・事業所得(株式等の譲渡によるものは例外)
・一時所得(源泉分離課税になるものは例外)
・雑所得(株式の譲渡、源泉分離課税になるものは例外)
・申告分離課税
申告分離課税は、該当の所得金額の合計した総所得金額に対して税額を計算し、確定申告によって税金を納めます。
申告分離課税は、所得区分ごとに定められた税率によって計算され、対象となる区分は以下のとおりです。
・山林所得
・退職所得(確定申告をする場合)
・配当所得(申告分離課税を選択したもの)
・譲渡所得(土地・建物・株式など)
・源泉分離課税
源泉分離課税は、所得を受け取った段階ですでに税金が差し引かれているため申告は必要ありません。
一律で20.315%(所得税15.315%・住民税5%)が税率となります。
・譲渡所得(源泉分離課税を選択したもの)
・配当所得(源泉分離課税を選択したもの)
・利子所得
・退職所得
・一時所得(加入から5年以内に発生した一時払いの養老保険や損害保険など)
このように所得が10種類に区分され、さらに課税の方法も分けられ、例外も適用されるなど、税率の算出方法は非常に複雑にできていることがわかります。
基本的には上記の所得税の速算表で税額を算出しますが、特別な控除が認められている区分もあるため、都度確認することが必要です。
仮に退職所得を例に挙げると
・勤続年数20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
・勤続年数20年以下の場合:40万円×勤続年数
このように、独自の控除があります。
■まとめ
ここまで、所得の区分とその特徴について解説してきました。
非常に複雑な所得の区分ですが、基本的には課税の公平性を図るために設けられています。
細分化することによって、所得やその種別に応じた税金が課せられるように工夫がされているといえます。
「本記事のまとめ」
所得の区分は10種類だが、所得区分ごとに申告方法が同じとは限らない
所得税の最高税率は実質55%(所得税45%・住民税10%)
申告分離課税か、源泉分離課税かを選択できる所得もある