不動産価格の推移は?上昇・下落要因についても考察

不動産価格の推移は?上昇・下落要因についても考察

(令和4年5月5日更新)

不動産の上昇や下落にはさまざまな要因が絡みますが、今後の不動産価格については色々な予想がなされています。

本記事では、不動産価格の推移をはじめ、不動産の上昇・下落要因などをご紹介します。

価格予想についても解説していますので、ぜひご参考ください。

■不動産価格2008~2021年の推移

はじめに、不動産価格の過去から現在に至るまでの推移についてご紹介します。

まずはこちらの表をご覧ください。

国土交通省「不動産価格指数(住宅)(令和3年11月分・季節調整値)」

引用URL:https://www.mlit.go.jp/common/001465566.pdf


上記の表は過去14年間における住宅価格指数の推移です。

この表に基づき、以下に解説していきます。

住宅は全国単位でマンションが突出

上記の表を見てお分かりのように、不動産価格の上昇率はマンションが突出しています。

一方で、住宅総合・住宅地・戸建住宅については全体的にわずかな上昇であるのが特徴的です。

マンションの上昇率との大きな差がある理由は、マンションは主に駅近の好立地に多く建ち、住宅地や戸建などは郊外にも多く建っている点が挙げられます。

マンションラッシュが進む市街地は需要も高いため、価格相場が上昇しているのに対し、住宅地や戸建においては郊外の価格は大きく変わっていません。

したがって全国的に見た場合には、価格上昇が進む市街地に多いマンションと、価格の上昇がない、多くの郊外エリアを含めた戸建住宅等の上昇率が反映された結果です。

そのため上記の図は、利便性の高い市街地は上昇し、郊外はほとんど上昇していないことが読み取れるといえます。

取引件数は年々上昇傾向

次は、同じ2008年から2021年の間で取引件数はどのように推移しているのかを見てみましょう。

不動産販売件数(2008~2021)

年度マンション(取引件数)戸建(取引件数)
2008年121,485件107,646件
2009年161,419件155,462件
2010年161,345件156,545件
2011年150,937件144,426件
2012年154,839件147,676件
2013年159,579件160,246件
2014年158,458件157,647件
2015年165,732件167,186件
2016年168,757件176,965件
2017年172,191件185,048件
2018年173,368件188,031件
2019年182,021件195,964件
2020年178,871件179,610件
2021年(11月まで)172,547件177,901件
上昇率約142%約165%

国土交通省「不動産取引件数・面積」より抜粋

マンション・戸建ともに、14年間で取引件数自体も大きく伸びていることがわかります。

順調な上昇を続けていることから、全体的に住宅市場の活況が見て取れますが、2020年はマンション・戸建どちらも件数が下がりました。

お察しの通り、2019年12年頃から始まった「コロナ渦」の影響が反映されています。

とはいえパンデミックといわれるほどの流行で、緊急事態宣言などの経済活動停止、前代未聞の状況の割にはそこまでの下落ともいえないでしょう。

特にマンションにおいては戸建と比較して下落幅も小さく、異常な状況下でも売買は比較的盛んであったといえます。

一方の戸建に関しても、コロナ渦による建築資材および設備不足により、新築住宅の着工・完工が遅れたことで受注が鈍化したことも、取引件数減少の大きな要因です。

つまり、物理的な遅延はあったものの世間の購入意欲自体はそこまで下がっていなかったとも分析できます。

2021年に関しては11月までの数値ですが、2020年とほぼ並んでいることから、取引件数に大きな下落は見られません。

これらのデータを鑑みるに、結果として2021年までの不動産市況は盛んであったといえるでしょう。

■今後の不動産価格の上昇要因

不動産価格は今後どうなるのでしょうか?



ここでは、不動産価格の上昇要因についてご紹介します。

富裕層の増加

日本の富裕層増加によって不動産売買が盛んになり、不動産価格が今後も上昇していくという見方があります。

富裕層増加の大きな要因は、株式などの金融資産増加が背景にあるといえるでしょう。

まさに資本が資本を生む構図がそこにあり、富裕層・超富裕層の金融資産保有額は、2013年以降増加を続けている状況です。

そんな富裕層は、相続対策などでマンションなどの不動産を購入するケースが多く見受けられます。

現金の価値は等倍ですが、マンションなどの相続税における評価は固定資産税評価額によって算出されることから、評価自体を下げられるため節税効果があることが理由です。

購入した土地にアパートなどを建てて賃貸運用する場合にも「貸家建付地」として評価されるため、評価額を下げられる点において同様に節税となります。

このような理由が、不動産価格上昇の要因の一つとして考えられるでしょう。

不動産投資ブーム

不動産投資ブームも、不動産価格の上昇に拍車をかける一因といえるでしょう。

日本銀行のマイナス金利政策にはじまり、将来の年金に対する不安から私的年金の形成を考える人が増えたことで、不動産投資が盛んになっています。

また、個人投資家でも金融機関からの融資が受けやすくなったことも追い風になりました。

その中でも区分マンション投資は、一棟不動産よりもハードルが低くはじめやすいことから人気となっています。

特に都心部にはこれら投資用の新築マンションが次々と建ち、高い所得税を払っているサラリーマンを中心に、税金対策などと銘打って販売されています。

詳しい説明はあえて省きますが、上記の場合、低い利回りでも買ってしまう人が多くいるため、結果的に不動産価格上昇の要因となっています。

このように、実需の不動産以外でも不動産価格の上昇に影響を与えているといえるでしょう。


■今後の不動産価格の下落要因

次は反対に、不動産価格が下落する要因についてご紹介します。


不動産の供給過多

不動産の供給過多によって、今後不動産価格が下落するのでは、と指摘されています。

実際に日本では「空き家問題」が大きな課題です。

空き家問題は主に郊外に多く散見される問題ですが、都心部におけるマンションの過剰供給も問題化してきているのが現状です。

つまり、盛んな不動産販売件数の裏で、地方の空き家は放置されているにもかかわらず、市街地の新築住宅も供給過多気味となっているという異常事態が起こっています。

また、2022年問題も不動産の供給過多に拍車をかける要因といえるでしょう。

2022年問題とは、農地保全を目的とした「生産緑地」に指定された土地が、2022年に続々と指定解除され、大量に市場に出回ることで不動産が飽和状態になる懸念のことです。

生産緑地に指定されている間は固定資産税の優遇を受けられますが、解除により宅地同様の税金が課せられ、維持費が大幅に増えるため、売却する所有者が増えると予想されています。

その解除される土地の規模は、三大都市圏にある約1万3,000ヘクタールある生産緑地のうち約8割にのぼるため、相当な規模です。

これらは不動産価格の下落に大きく影響するといわれています。

少子高齢化・人口減少

少子高齢化・人口減少も不動産価格の下落要因と考えられています。

少子高齢化は前述の空き家問題にも関わる問題であり、同時に住宅購入層も将来的に減少する可能性が高いといえるでしょう。

また、人口減少により住宅購入層の絶対数も減るため、不動産市況が鈍化する可能性も予想されています。

■今後の不動産価格の予想

ここまで不動産価格の推移から、不動産価格上昇および下落要因について解説をしてきましたが、今後の見通しはどうなるのでしょうか?

さまざまな見方がありますが、筆者の結論としては「当面上昇傾向」と予想します。

理由としては、国内におけるさまざまな問題こそあれ、日本の不動産は世界的には安い部類に入るためです。

一般財団法人 日本不動産研究所の「第17回国際不動産価格賃料指数」によると、東京のマンション価格指数を100とした場合の、各国との比較表が掲載されています。

「マンション/高級住宅(ハイエンドクラス)の価格水準比較」より抜粋

東京100
北京105.8
上海132.6
香港187.1
台北122.3
シンガポール110.2
ニューヨーク119.7
ロンドン220.6

引用URL:https://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2017/11/47dc8d6c9a14d9a046ca925e3ed9a047.pdf

上記の表からも、日本の不動産は世界的に割安であり、外資が流入する魅力がある市場といえます。

コロナ渦が落ち着けば、改めて外資が追い風となる可能性もあるのではないでしょうか。


もちろん、あくまでも一つの予想であり、今後日本の不動産市場がどうなっていくかを正確に分析することは難しいでしょう。

■まとめ

ここまで、不動産価格の推移や今後の予想について解説してきました。

本記事を通して、不動産購入や売却・不動産投資の一助となれば幸いです。

「本記事のまとめ」

不動産価格は過去14年においてはマンションが大きく上昇

今後の日本の不動産市場は、上昇要因・下落要因どちらもはらんでいる

筆者は、全国的には今後も上昇すると予想

不動産カテゴリの最新記事