不動産の媒介契約は3種類?それぞれの違いやよくある質問も解説

不動産の媒介契約は3種類?それぞれの違いやよくある質問も解説

(令和4年5月5日更新)

所有する不動産を売却する場合は、不動産会社に依頼することが一般的です。

その売却の手続きに必要となるのが「媒介契約」ですが、媒介契約は3種類あり、それぞれ特徴があります。

今回は媒介契約におけるそれぞれの違いや、媒介契約の注意点についても解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

■媒介契約とは売却依頼のこと

媒介契約とは、不動産の売却を特定の不動産会社に依頼する契約です。

つまり、売却にあたってのお約束事項を書面に残すことで、未然にトラブルを防げます。

媒介契約には約款があり、さまざまな条項が並びますが、主に定める内容は以下の通りです。

媒介契約の主な内容

・媒介(売却)価格

・媒介期間

・媒介報酬額(仲介手数料など)

・報酬の支払い時期

媒介価格

売却する希望の価格を決定し、記載します。

価格設定は売主の自由ですが、あまりに相場とかけ離れてしまうと売れないため、価格を見直す必要があります。

媒介期間

媒介期間は3ヵ月を超えない期間で定めます。

なお、後に説明する一般媒介契約には上記の定めはありません。

媒介報酬額

主に仲介手数料のことを指します。

売却が成功した報酬として、不動産会社に支払うお金です。

仲介手数料の限度

取引額200万円以下の部分5%(以内)
取引額200万円超400万円以下の部分4%(以内)
取引額400万円を超える部分3%(以内)


速算式

成約価格×3%+6万円×消費税


上記の計算によって算出します。

「限度」というのは、不動産会社は仲介手数料を上記の計算式を超える金額以上受け取ってはいけないと、宅建業法(不動産業の法律)で決められているという意味です。

ただし、仲介手数料以外にかかる書類の取得費用や、調査などにかかる実費について、別途請求する定めをする場合もあります。

報酬の支払い時期

前述の報酬をいつ支払うのか?について定めます。

不動産の媒介契約は基本的に成功報酬ですが、報酬を分けて支払うよう定めることも可能です。

例えば売買契約時に報酬の半金、決済時に残りの半金といった具合です。

とはいえ、売買契約時に半金を支払うことは、売主にとってあまりメリットはなく、どちらかといえば不動産会社にとって都合がよいといえるでしょう。

上記を共通事項として3種類の媒介契約の中から選択することになります。

次は媒介契約の種類について、詳しく解説します。

■媒介契約の種類

媒介契約は全部で3種類あります。

それぞれの特徴と違いについて、以下の表にまとめました。

媒介の種類依頼会社数自己発見取引報告義務流通機構への登録義務売却の期間
専属専任媒介1社のみ不可1週間に1回以上契約の翌日から5営業日以内3ヵ月
専任媒介1社のみ2週間に1回以上契約の翌日から7営業日以内3ヵ月
一般媒介複数社可義務なし義務なし定めなし

上記が3種類の媒介契約における比較表です。

次に、それぞれの特徴について解説します。


1社限定依頼の「専属専任媒介契約」

1社のみに依頼する専属専任媒介契約は、最も売主との関係が密になる媒介契約といえます。

他の媒介契約との違いは、自己発見取引ができないことです。

自己発見取引とは、売主自身が見つけた買主と直接売買契約を結ぶことを意味します。

つまり、直接契約するため不動産会社に報酬は発生しないことになりますが、専属専任媒介契約はこれを禁止しています。

また、売却の状況報告についても1週間に1回以上する義務があります。

したがって、売却における全責任を不動産会社1社が負うことになります。

逆にいえば不動産会社は責任がある分、専属専任媒介契約を結んでいる不動産売却に最も力を注ぐともいえるでしょう。

不動産流通機構(レインズ)への登録も義務付けられており、5営業日以内に登録すると定められています。

不動産流通機構とは、不動産業者のみがアクセスできる、物件のデータベースのことです。

このデータベースに物件を登録することで、全国の不動産会社に売却不動産の情報が共有されます。

これにより、全国の不動産会社は売主に依頼された媒介業者を通じて、買主を紹介することができます。

専属専任媒介契約のメリットは、1社専属とすることで、不動産会社に責任の大きい質の高い仕事を要求できることといえます。

デメリットは、自己発見取引ができないことと、他社との競争がないため1社の力量次第で売却に時間がかかる場合があることです。

自己取引も可能な「専任媒介契約」

専属専任媒介契約と同じく1社のみに依頼するのが専任媒介契約です。

専属専任媒介契約との大きな違いは、専任媒介契約は自己発見取引が可能な点が挙げられます。

また、売却活動の報告義務については2週間に1回以上と、専属専任媒介契約よりも若干緩くなっているといえます。

1社専任でありながら、個人売買も可能なのが専任媒介契約の特徴とメリットです。

デメリットは専属専任媒介契約と同じく、不動産会社同士の競争がない点と、1社の力量にかかってしまう点です。

複数社に依頼する「一般媒介契約」

一般媒介契約は、上記2種類の媒介契約とは違い、複数社に売却を依頼できる媒介契約です。

また、不動産流通機構への登録義務もなければ、売却活動の報告義務もありません。

さらに媒介期間においても定めがないことから、上記2つの媒介契約とは大きく異なる特徴を持っています。

当然、自己発見取引も可能であり、売主・不動産会社どちらにとっても決まりの緩い媒介契約です。

不動産会社を1社に絞れない時には、お試しの意味で複数社に依頼できるという点が、一般媒介契約のメリットといえます。

デメリットは、各社の報告義務がないため状況が把握しにくいことと、専属でないことから責任が分散し、売却に力を入れてもらえない可能性がある点です。


■不動産購入も媒介契約が必要?


不動産仲介業者を通じて不動産を購入する場合は、厳密には媒介契約が必要です。



ただしこれは、不動産会社側の立場としては必要という意味で、その理由は「仲介手数料」にあります。


仲介手数料とは媒介成果の報酬であるため、買主から仲介手数料をもらうには媒介契約を締結している必要がある、という理屈です。



では、不動産会社に物件探しを依頼する段階で媒介契約が必要なのかといえば、決してそうではありません。


以下に解説します。

不動産購入の媒介契約はメリットなし

不動産購入前、つまり物件探しの段階で媒介契約をするメリットは買主側にはないため、必要ないと判断してよいでしょう。

不動産情報は、さまざまなインターネットサイトなどで複数の不動産会社から発信されています。

不動産会社によって購入時のサービスなどが違う場合もあるため、同じ物件を購入する場合でも比較する必要があるでしょう。

したがって、物件探しの段階で特定の不動産会社と媒介契約を結ぶことは、その不動産会社にしかメリットがないといえます。

さらにいえば、不動産会社が売主である物件も多く存在します。

この場合は不動産仲介業者が介さないため、仲介手数料がかかりません。

つまり、媒介契約自体が不要となるわけです。

そのため不動産購入時点の買主としての立場においては、媒介契約について考える必要はないと考えてよいでしょう。

不動産購入時に媒介契約をすればよい

購入時の媒介契約は、不動産売買契約時に同時に行うのがよいでしょう。

不動産仲介会社の収入は仲介手数料です。

仲介手数料をもらうためには媒介契約という、手数料をもらう理由を明確にしてトラブルを防止するという意味では、必要だといえます。

とはいえこの時点で買主は、購入時の諸費用明細などを確認済みであり、仲介手数料が必要であることも把握しているはずです。

そのため買主は、媒介契約書に記載されている仲介手数料と、明細に記載の額が同じであることを確認したうえで署名捺印すれば、トラブルになることはないでしょう。

不動産売却時ほどの重要性はない

ここまでのような理由から、買主側における媒介契約は、売主ほどの重要性はないといえます。

売主に対しては事前に明確とすべきことでも、買主側にとっては意味を成さないことが多いためです。

例えば媒介契約の3つの種類は、売主にとっては非常に重要な要素となりますが、売買契約前に締結するであろう買主の媒介契約には、3つの種類における意味はありません。

そのため買主が締結する媒介契約は、最もルールが緩い一般媒介契約で締結することが多いでしょう。

買主としては、媒介契約についてやその種類について深く考える必要はなく、仲介手数料の金額に間違いがないかのみ確認すればよいでしょう。

■不動産の媒介契約における注意点

次は、不動産の媒介契約における注意点について解説します。

不動産会社を信頼して依頼するが故に、盲点となるポイントがいくつかありますので、この点については押さえておく必要があるでしょう。

以下のポイントを参考にしてください。


レインズに登録されていないかも?

売却を依頼した不動産が、不動産流通機構(レインズ)に登録されていない可能性があります。

前述のとおり、媒介契約日の翌日から5営業日以内(専属専任媒介契約)または7営業日以内(専任媒介契約)にレインズに登録することが、不動産会社の媒介義務です。

ですが残念なことに、本来登録されているはずの不動産が登録されていないケースがあるのも事実です。

レインズに登録されていない不動産は、全国の不動産会社に情報が届かないことになります。

つまり、依頼した不動産会社のみが売主の物件情報を握っている状態であり、売主にとっては良い売却の機会を逃す可能性もあり、デメリットしかありません。

これは、不動産会社による「囲い込み」といわれる行為の一つです。

売主の大きな損害にもなりえるこれらの行為は、必ず防止する必要があります。

では具体的にどのようにすればよいのでしょうか?

それは、媒介契約後にレインズに物件登録した際に発行される「登録証明書」を不動産会社から受領することです。

登録証明書に記載されているIDとパスワードで「売却依頼主物件確認」の画面にログインして、その登録状況を確認します。

このときの取引状況が「公開中」となっていれば、レインズを通して販売中となっていることが確認できます。

ただし、一時的に登録して即時または数日後に登録削除する悪質なケースもあるため、注意が必要です。

対策として、一度のみの登録確認ではなく定期的に「売却依頼主物件確認」にログインして、販売状況を確認しましょう。

売却依頼主物件確認ページは、登録証明書の下部記載のURLまたは、インターネット検索で「売却依頼主物件確認」と入力すれば、検索ページの一番上に表示されます。


広告活動を「不可」にされていないか

他社の広告活動が「不可」にされていないか注意しましょう。

レインズに登録された不動産情報は、複数の不動産会社が共有し、買主へ紹介ができる仕組みです。

さらに広告活動についても、窓口の不動産会社(売却を依頼した不動産会社)の承諾を得られ次第、行えるようになっています。

この広告活動については、売主と、売却を依頼した不動産会社との間で打ち合わせした内容通りに進めることになりますが、不動産会社の独断で行われているケースがあります。

つまり、売主の承諾を得ずに他社の広告活動を制限することから、これも「囲い込み」にあたる行為です。

窓口の不動産会社は売主の代わりに売却活動をする立場であり、独断で他社の広告活動を制限してよいはずはありません。

対策法は、インターネットサイトなどで自身の売物件が他社からも掲載されているかを確認することです。

他社からも掲載されていることは、窓口の不動産会社が承諾をしているという証拠であり、健全な売却がなされているといえるでしょう。

逆に近所に売却を知られたくないなど、売主の希望で広告を制限したい場合には、事前に窓口の不動産会社とよく相談しておく必要があります。

例えば、レインズへの登録のみでインターネット広告はしないなど、細かく取り決めをしておくことが可能です。

「商談中」にされていないか

成約はおろか案内もないのに商談中にされていないか注意しましょう。

前述のレインズ登録における取引状況には、3つのステータスがあります。

公開中他の不動産会社の問い合わせや案内が可能な状態
書面による購入申込みあり購入申し込みが入り、商談に入っている状態(契約予定)
売主都合で一時紹介停止中売主の事情により、物件紹介をストップしている状態

通常の売却状態は、一番上の「公開中」です。

他社経由の買主も紹介できる状態がこれにあたります。

特に商談や事情もないのに、他の2つの状態となっている場合にはすぐに不動産会社へ連絡しましょう。

なお、これらの状態も「売却依頼主物件確認」にログインすることで確認ができます。


■不動産媒介契約のQ&A

最後は、不動産媒介契約におけるよくある質問についてまとめました。

不動産の媒介契約はやめられる?

媒介契約は理由があれば途中でやめることが可能です。

ただし、売主の一方的な理由で取りやめることはトラブルになりえますので避けましょう。

不動産の媒介契約を途中で取りやめる主な理由には以下の例があります。

媒介契約を途中でやめるケース

①媒介契約に係る義務を、不動産会社が怠った場合
∟広告活動や定期的な報告をしなかったなど

②虚偽の報告などが明らかになった場合
∟売れていないのに商談中と偽るなど

③宅建業法に違反する行為があったとき
∟レインズに登録しないなどの違反行為

④売主にやむを得ない事情があるとき
∟家族間トラブルなど



なお、上記は専属専任媒介契約および専任媒介契約の場合です。

一般媒介契約の場合はいつでも解約できます。

①②③は不動産会社の過失といえるため、即座に解約が可能ですが、④についてはタイミングによってはトラブルになることもあるため注意しましょう。

例えば契約を目前とした、売主の都合による解約などです。

④の場合は不動産会社には落ち度がないことから、売主の立場としては弱いこともあります。

そのため、場合によっては実費や手数料請求などのペナルティが発生する可能性もありますので、よく話し合うことが重要です。

「囲い込み」を防ぐには?

不動産会社による「囲い込み」は不動産業界における課題であり、100%の対策はできていないのが現状です。

例えば、レインズの取引状況は「公開中」であるにもかかわらず、他の不動産会社が電話で問い合わせると、窓口の担当から「商談中」などといわれるようなケースです。

このような場合において、売主がすべて確認することは難しいため、囲い込みについてはまだまだ対策が必要だといえます。

とはいえ囲い込みは、売主の利益を著しく毀損する行為であることから、売主の立場として前述の内容も含め以下の点を意識しましょう。

チェックポイント

①「売却依頼主物件確認」をこまめにチェック。ログインして、登録の有無・販売状況の確認

②専属・専任媒介の場合も、他の不動産会社に販売状況の確認を依頼
∟相査定をした不動産会社であれば頼みやすい。

③依頼予定の不動産会社に直接伝えておく
∟自身で確認する旨も伝えておくことで予防につながる。

特に②はポイントといえます。

媒介契約を依頼する際には複数の不動産会社に相査定を依頼することでしょう。

専属専任または専任媒介契約の場合は、そこから1社に絞るわけですが、選ばれなかった不動産会社との連絡を絶ってはいけません。

媒介契約は3ヵ月ごとの更新のため、万が一依頼した不動産会社の囲い込みが発覚すれば、4ヵ月目には他の不動産会社へ依頼する可能性が高いでしょう。

選ばれなかった不動産会社は、その4ヵ月目に選ばれる可能性を期待して売主の不動産売却の動向をチェックしてくれることがあります。

前述のように、売却物件が「公開中」となっていても担当者ベースで口頭による囲い込みがあるため、ほかの不動産会社に動向のチェックを依頼することでこれらを把握できるでしょう。

結局、3つの媒介契約のどれを選べばいい?

媒介契約には3種類あることを解説しましたが、結局どれを選べばよいのでしょうか?

前述のメリット・デメリットを参考にしていただき、最終的には売主自身が判断することになりますが、どうしても決められない場合は一般媒介契約で始めるのもよいでしょう。

一般媒介契約でも、熱心に売却活動する不動産会社もいます。

その中で改めて専任媒介契約などに切り替えるのも手です。

不動産会社によって媒介契約のサービスは違う?

不動産会社によって媒介契約のサービスは違います。

そのため、媒介契約の種類はもちろんですが、各社のサービスについても比較しましょう。

例えば、空き家の場合にハウスクリーニングなどの清掃サービスがあったり、インスペクション(建物検査)が無料でついてくるなどがあります。

仲介手数料を割り引く会社もありますが、報酬が低いが故に営業の品質に影響する場合があるため注意が必要でしょう。

売主の立場からすれば、仲介手数料は安いに越したことはありませんが、不動産会社も「人」の集まりです。

安い報酬で品質の高い仕事をしているとすれば、いずれどこかで歪みが生じる場合があるかもしれません。

かといって安かろう悪かろうでは意味がないため、正当な仕事には正当な報酬が必要なことを念頭において、これらのサービスを検討するとよいでしょう。

■まとめ

ここまで、不動産の媒介契約の種類と、メリット・デメリットや囲い込みの問題についても紹介してきました。


「本記事のまとめ」

媒介契約は専属専任媒介・専任媒介・一般媒介の3種類

不動産売却における「囲い込み」が問題となっている

どうしても決められないなら、一般媒介契約でもOK

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