(令和4年5月5日更新)
本記事は、地盤改良工事にかかる費用について紹介しています。
住宅建築と密接な関係がある地盤改良工事ですが、一体どのくらいの費用がかかるのでしょうか?
さらに、地盤改良工事は必ず必要なのか、どのように行うのかなどについて、本記事を通して知っておいていただければ幸いです。
■地盤改良工事とは
地盤は大きく2つの層に分かれており、一つは「軟弱層」もう一つは「支持層」です。
軟弱層は柔らかく、地盤の地表部分から浅い層にあります。
支持層は固く、軟弱層より下の深い部分にあります。
つまり、地表から支持層(強固地盤)の間にあるのが軟弱層(柔らかい地盤)ということです。
この支持層までの深さや地盤全体の強さを調べるのが「地盤調査」です。
地盤調査の結果を受けて、地盤の強弱および地盤改良工事が必要か否かを判断します。
■地盤改良工事の種類と費用目安
地盤改良工事には一体どのくらいの費用が必要なのでしょうか。
まず、地盤改良工事は主に3つの種類があり、それぞれかかるコストも違うため、これらの費用目安について、以下に解説していきます。
表層改良工事
表層改良工事の費用目安は30~60万円が目安です。
表層改良工事とは、地盤の支持層までの軟弱層が約2mまでの、比較的浅い場合に用いられる工事です。
表層部分の土壌を掘削して、セメント系の固化材を土と混ぜることで、地盤を締め固めます。
柱状改良工事
柱状改良工事の費用は60~100万円が目安です。
セメント系固化材と水を混ぜ合わせたものを、土壌へ柱状に流し込み、固めます。
軟弱地盤が比較的深めの場合に用いられます(2m~10m前後)
住宅の基礎部分と、地盤の支持層を柱で繋ぐイメージです。
基礎の形に合わせて流し込むため、広い基礎であるほど費用がかかります。
鋼管杭工事
鋼管杭工事の費用は120~200万円が目安です。
セメントではなく、鋼管を地中の支持層まで差し込みます。
柱状改良よりも柱の直径が短い上、強固な特徴を持ち、20m前後の深さの軟弱層にも対応します。
こちらも住宅の基礎に合わせて施工しますが、柱状改良工事よりもかなり高額となります。
■地盤改良工事がなぜ必要?
地盤改良工事が必要な場合にはどのようなケースがあるのでしょうか?
主な3点について、以下に解説します。
軟弱地盤対策
代表的な理由は、軟弱地盤対策です。
前述のように地盤には軟弱層と支持層があり、軟弱層の上に家を建てると、家の重量に地盤が耐えられずに地盤沈下を起こしてしまうリスクがあります。
すでに建っている家に地盤改良工事を施すことはできないため、更地の状態から施工しておくことで、これらのリスクに対応します。
不同沈下対策
不同沈下とは、建物が不揃いに沈下することです。
地盤沈下と似た意味合いですが、不同沈下は地盤の強弱がまばらであることから、部分的に沈下を起こす特徴があります。
例えば、宅地造成に伴う切土・盛土などにおける、土壌の締め固めが不十分な場合にも引き起こされます。
地盤自体は固いのに、盛土部分が軟弱になってしまうことが原因です。
液状化現象対策
液状化現象とは、地震が起こった際に地盤が液状化してしまう現象です。
地震によって地盤内の砂の粒子が散らばり、地中内の水分に浮いた状態となることで、水分に浮いた砂の粒子が下に沈み、地表に水が染み出す形となります。
これに伴い、地盤の表面部分の強度が低下することが、建物沈下の原因です。
この時地表に出る水は、非常に勢いよく噴き出すこともあり、排水しきれずに大きな水溜りになる場合もあります。
■地盤調査の主な種類
ここまで解説した地盤改良工事の必要性について、その有無を判断するために地盤を調査します。
ここでは一般的な3種類の地盤調査について、以下に解説します。
スウェーデン式サウンディング試験
スウェーデン式サウンディング試験は、地盤調査の方法として最も一般的です。
地盤にロッドと呼ばれる鉄の細い棒を、垂直に突き刺して荷重をかけていきます。
自重および回転を繰り返して地盤の固さを計測する方法で、費用の目安は5~8万円前後です。
表面波探査法
表面探査法とは、探査機を用いて地面を揺らして、その揺れの伝わる早さで地盤の固さを計測する方法です。
表面波探査法の大きな特徴は、スウェーデン式サウンディング試験との調査結果の差です。
同じ土地において、スウェーデン式サウンディング試験では地盤改良工事を要する調査結果が出ても、表面波探査法では改良不要で転圧(重機など表面の土を固めること)のみ、という調査結果となる場合があります。
同じ土地で調査結果の違いが出る理由は、その調査方法です。
例えるなら、土の表面を指先で押し差すのがスウェーデン式サウンディング試験で、手のひらで押すのが表面波探査法といえばわかりやすいでしょう。
どちらの調査を選ぶのかは、様々な意見を取り入れた上で判断しましょう。
表面波探査法の費用目安は、~約10万円です。
ボーリング調査
ボーリング調査とは、主に大規模建築物(マンションなど)の建設の際に用いられる調査方法です。
したがって、一般的規模の住宅においてボーリング調査をすることはほとんどないと考えてよいでしょう。
ボーリング調査はスクリューで地盤に穴を掘り、ハンマーを落下させて強度を測ります。
上記によるほかの調査ではできない、地質調査もできるのが特徴です。
一般住宅でボーリング調査をするケースは、大規模な住宅や地下室を設ける場合が一般的で、費用の目安は30万円前後です。
■地盤改良工事の問題点
地中埋設物としての問題
地盤改良工事のセメントや鋼管は、地中埋設物としての扱いを受けます。
これらは将来建て替えの際に撤去する必要があり、建物の解体費用に加えて高額な費用がかかる可能性があります。
したがって、実は土地の資産価値が下がる事実を、あまり知らない人も多いです。
実際に2003年から土地の評価方法は変わっており、埋設物に関しては土地の評価から差し引かれるようになっています。
環境汚染の問題
地盤改良工事は、環境汚染の問題も指摘されています。
特に施工の際に使用されるセメントには、発がん性物質が含まれている可能性があるため、注意が必要です。
この発がん性物質は「六価クロム」と呼ばれる成分で、本来であればこの成分量も検査する必要があるでしょう。
しかしながら、そのような義務付けはまだなされていません。
施工品質の問題
地盤改良工事は、施工品質の問題も懸念されています。
地中内の施工が本当に正しく行われたのかどうかを、正確に知る術はありません。
つまり、埋め戻して家が建ってしまえば、後で確認する手段はないということです。
以前、某大手マンションディベロッパーが手掛ける大規模マンションにおいて、地盤改良工事における鋼管杭の一部が支持層に達しておらず、不同沈下を起こした問題がニュースで報道されたことを知っている方もおられるでしょう。
地盤改良工事後の第三者機関による検査の義務付けが、今後の課題といえます。
■地盤改良工事についてのQ&A
最後に、地盤改良工事についてのよくある質問についてまとめました。
地盤改良工事の保証期間は?
地盤改良工事による保証期間は、一般的に10年間です。
ここでいう保証は、住宅の保証(瑕疵担保責任保険)の10年とは違います。
地盤改良工事をしたにもかかわらず、万が一地盤沈下などを起こしてしまった場合の保証です。
そのため、地盤の問題によって建物が損傷した場合には、住宅瑕疵担保責任保険は適用されない可能性もあります。
地盤保証は施工者が保険に加入することになりますが、その保証期間および保険金額については、必ず事前に確認するようにしましょう。
なお、保証期間は10年~20年超え、保険金額は2,000万円~5,000万円と、施工会社によってまちまちである点にも注意です。
地盤調査の種類で調査結果は変わる?
地盤調査の種類によって調査結果が変わることがあります。
これについては、前述のスウェーデン式サウンディング試験と表面波探査法の例が挙げられます。
ではどうすればよいのか?といいたいところですが、正直本当に難しい問題です。
地盤改良工事の必要性は理解できるものの、一方では地中埋設物に伴う資産価値の問題もあります。
したがって地盤調査および地盤改良工事には、まだまだ解決すべき問題が山積しているといえるでしょう。
現段階では様々な見解があるため、たくさんの意見を取り入れた上で判断されることをおすすめします。
地盤調査のみでは地盤保証されない?
地盤調査のみでも地盤保証を受けることはできます。
調査の結果、地盤改良をせずとも強固な地盤であると証明された土地に対しては、地盤保証は適用されます。
保証の範囲は一般的に5~10年ですが、これらの期間や条件等についても、施工会社によって違う場合もあるため、併せて事前に確認しましょう。
結局のところ、地盤改良工事は必要?
前述のように、地盤改良工事には安心を得る一方で懸念材料があることも事実です。
そこで一つの提案として、地盤改良工事が必要な土地はすべて見送るという選択肢もあります。
ただしこの場合、地盤が固い売り土地が大半を占めるわけでないため、土地探しは苦戦することが予想されます。
しかし、はじめから地盤の固い土地を選んでおくことで、ここまで解説した地盤改良工事などにおける問題をクリアできるともいえます。
選択肢が限られる可能性は高いですが、一案としてご参考いただければ幸いです。
■まとめ
ここまで、地盤改良工事の費用目安や必要性について解説してきました。
【本記事のまとめ】
地盤改良工事とは、地盤の固い部分と地表を繋ぐ工事のこと
地盤改良工事は地盤沈下防止に有効だが、費用の幅があるため注意
地盤改良工事には、地中埋設物や環境汚染等の問題がある
地盤改良工事の必要がない土地のみを探していくのもあり