(令和4年5月5日更新)
本記事ではセットバック(道路後退)について紹介しています。
土地と道路は密接な関係にあり、その接道状況によって必要な場合があるのがセットバックです。
土地の条件が大きく変わることもあるため、これらについてよく知っておきましょう。
今回はセットバックの目的や注意点について解説するとともに、確認ポイントも併せてご紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
■セットバック(道路後退)とは?
セットバックとは、対象の土地に接する道路が基準の幅に満たない場合に、一定のルールに基づき道路幅の不足分を敷地で補うために後退することを意味します。
つまり、セットバック=道路幅確保のための敷地提供です。
これらセットバックは、現状における最低道路幅(4m)に満たない道路に接する土地すべてが対象となります。
しかし直ちにセットバックしなければいけないわけではなく、建物の再建築時に行うことが義務付けられています。
■セットバックの目的とは?
セットバックの目的は、建築基準法上のルールを満たすためです。
建築基準法における最低道路幅員は4mと指定されています。
建築基準法は昭和25年11月23日に制定されましたが、同法が制定される以前に建ち並んでいた家には、4m未満の道路がたくさんありました。
これらの道路を建築基準法第42条2項による道路とみなし、セットバックの対象として再建築の条件に定めています。
そしてセットバックの目的には、主に以下の意味があります。
接道義務
代表的なものに「接道義務」があります。
建築基準法に定める幅員4m以上の道路に、敷地の間口が2m以上接していることが、建築を行う接道義務です。
4mに満たない狭い道路のことを「細街路(さいがいろ)」といい、細街路は日当たりや風通しが悪く、災害時などの対応も難しいという悪条件にあるといえます。
このような問題を解決するために、セットバックという接道義務を課しているのです。
防火上の理由
防火上の理由もあります。
細街路は、火災が起こった際の緊急車両の進入ができない場合があります。
消防車などが進入できないということは、建物や人に及ぶ被害が拡大する可能性もあり、住宅地として大きな問題を抱えているといえます。
セットバックは、このような防火上の問題における改善にも繋がります。
交通上の理由
セットバックの必要性には、交通上の理由も挙げられます。
基準とされている4mの道路幅であっても、決して広いわけではなく、むしろ最低限といえます。
敷地にガレージスペースを設けている場合、4m未満の道路では車庫入れが非常に困難となるでしょう。
また、4mの道路は車同士が対向する幅としてもギリギリです。
車種によっては全く対向ができないこともあります。
このことからもセットバックは、最低限の交通条件を確保する上でも必要です。
防犯上の理由
さらに、防犯上の理由もあります。
細街路の住宅地は見通しが悪いため、防犯性は低いといえるでしょう。
セットバックすることで道路幅が改善し、見通しが良くなりことで防犯性の向上が期待できます。
■セットバックが必要な土地の注意点
次は、セットバックが必要な土地の注意点について解説します。
土地の面積が減る
セットバックによって土地面積が減少します。
ここでいう土地面積の減少とは「有効宅地面積の減少」を指します。
つまり、建築可能な面積が減るということです。
また、登記簿記載の土地面積においては、分筆がされておらず道路負担部分が含まれている場合があるため注意が必要です。
つまり、現況道路が4m以上であっても、登記簿面積=有効宅地面積とは限りません。
セットバック部分には建築ができない
セットバック部分に建築物を建てることはできません。
セットバック部分は建ぺい率や容積率などの面積にも算入できない部分のため、住宅などの最大建築面積が制限されることを意味します。
登記上、セットバック部分は移管(自治体などへ寄附)する場合と、敷地の一部として所有する場合の二つが主ですが、建築をする上で有効宅地にみなされない点においてはどちらも同じです。
セットバック後も4m未満の場合もある
セットバックしても、現況の道路が4mになるとは限りません。
セットバックは道路の中心線から2mの後退のため、対側に建つ家がセットバックを行っていない場合には4mの道路ではありません。
例えば現況3mの道路であれば必要な後退距離は50㎝です。
つまり対側が後退していない場合の現況幅員は3.5mとなります。
建築確認申請上は、対側も将来的に後退することを前提とするため4mとみなしますが、この場合は現況とは違うため、3.5mでは通行が不便に感じる場合もあるでしょう。
■セットバックの土地確認ポイント
セットバックが必要な土地は意外多くあります。
このような土地が決して悪い土地というわけではないのですが、以下のポイントについては最低限チェックしておくようにしましょう。
希望の建物プランが入る土地か
新築用地としての場合、希望の建物が入る大きさかを事前に確認しましょう。
前述のように敷地面積には、これからセットバックが必要な場合や、すでに道路部分が含まれている場合もあります。
土地によって有効宅地面積の考え方が違うこともあるため、単純な敷地面積と道路幅のみで判断しないようにしましょう。
法務局にある「公図」という資料は、対象の土地と道路部分が分かれているかどうかを確認できます。
ただし分かりにくいこともあるため、有効宅地面積については不動産会社に詳しく教えてもらうのがよいでしょう。
将来的に道路幅は4mになる見込みか
将来的に、土地までの進入路がすべて4m以上になる見込みかをしておきましょう。
諸条件によってはセットバックの義務がない土地が進入路までにあることがあります。
具体的には以下の図のようなケースがあります。
非道路に接する土地に建築を行う場合、43条但し書き(みなし道路)の許可が必要となりますが、非道路はあくまでも「敷地内通路」という解釈です。
つまり、図のように一方がすでに建築基準法上の道路に接しているような緑色の敷地には、セットバック義務はありません。
したがってこのようなケースで赤色の土地を所有している場合、敷地に入るまでの道路は将来的にも4m以上にならない可能性が高いということになります。
他には、すでに建て替えが済んでいるにもかかわらず、セットバックされていない土地が進入路内にあることもあります。
これは比較的レアなケースですが、建築基準法を無視したいわゆる違反建築です。
もし、このような物件が対象地までの進入路内にあったとしたら、購入は避けるべきでしょう。
セットバック部分は非課税か
セットバック部分の固定資産税が非課税になっているかを確認しておきましょう。
自治体によっては、敷地と道路が分筆されていない土地は、道路部分が非課税になっていないこともあります。
逆に分筆がされていなくても、敷地面積から道路負担部分を按分して非課税面積を算出してくれている自治体もあります。
本来、分筆の有無や所有者の如何にかかわらず、道路として提供している以上は非課税とされるべきでしょう。
市町村役場などで取得できる「公課証明書」は、これらの状況が確認できます。
もし、セットバック部分が非課税となっていない場合は同役場に「道路非課税申告」をする必要があります。
余分な税金を払うことがないよう、道路部分の課税状況について必ず確認しましょう。
■まとめ
ここまで、セットバック(道路後退)の内容やその目的、注意点について紹介してきました。
【本記事のまとめ】
セットバックとは建築基準法のルールの一つ
セットバックは有効面積が減るが、最低限の接道を確保するために必要
敷地面積には、すでに道路負担部分が含まれている場合がある
4mの道路は最低限の幅員であり、決して広いとはいえない
セットバック部分に固定資産税が課税されていないか確認