不動産の前面道路の種類をわかりやすく解説します!

不動産の前面道路の種類をわかりやすく解説します!

(令和4年5月5日更新)

本記事は、不動産の前面道路の種類について解説しています。

インターネットなどで不動産情報を見ていると、物件に接している道路について触れている項目を目にしたことがあるでしょう。

前面道路は、不動産と密接に関係する部分であると同時に、不動産の資産価値をも大きく左右します。

前面道路の種類をはじめ、各道路の特徴や注意点についても説明していきますので、ぜひ最後までご覧ください。

■不動産と前面道路との関係は?

不動産と前面道路の関係のことを「接道」と呼びます。

ここで解説する不動産とは主に「土地」を指し、接道とは土地に接している道路です。

接道には、建築基準法で定められた様々な種別があり、これらは特定行政庁によって指定されています。

建築基準法には、幅員4m以上の建築基準法の道路に間口が2m以上接道しているという、入口ともいえるルールがあります。

そのため、同じ形状、規模の土地であっても、前面道路の状況次第で建築できる建物も大きく変わることもあるため、接道は非常に重要な部分といえるでしょう。


■不動産の前面道路の種類

それでは早速、前面道路の種類について解説をしていきます。

道路は「公道」と「私道」の二つに分かれますが、建築基準上必ずしも公道で無ければいけないというルールはありません。

国や自治体が所有し、維持管理の責任を負っている道路を「公道」と呼び、それ以外が所有している道路を「私道」と呼びます。

私道の維持管理は、国や自治体が行っている場合もありますが、民間の団体や個人が所有している道路は基本的に私道という扱いです。

また、前面道路は現況の幅員によっても種類が分けられます。

建築基準法に基づき、特定行政庁によって定められた道路を次項にまとめました。

幅員4m以上の道路

道路
種別
種別の内容公道
私道
42条1項
1号道路
国道・県道・市道といった一般的な公道道路法の認定を受けた道路公道
42条1項
3号道路
建築基準法施行時(昭和23年11月23日)以前より存在する道路
(既存道路)
両方あり
42条1項
4号道路
2年以内に築造予定の施行前段階の道路で最終的に公道となる
(都市計画道路)
公道
42条1項
5号道路
土地所有者が築造し、特定行政庁からその位置の指定を受けた道路
(位置指定道路)
基本的に
私道

上記は全て、道路幅員が4m以上確保されている場合に指定される道路種別となります。

これらは基本的には公道ですが、42条1項5号道路は主に私有地等を道路として築造し、要件を満たすことで位置の指定を受けます。

したがって42条1項5号道路は私道ですが、道路築造後に行政に移管して公道となる場合もあり、42条1項3号道路は所有者が国や自治体等かそれ以外によって公道・私道に分かれます。

幅員4m未満の道路

道路
種別
 種別の内容公道
私道
42条
2項道路
建築基準法施行の際、既に建築物が建ち並び、行政が指定した道路
(みなし道路)
両方あり
42条
3項道路
特定の事情により、幅員2.7m以上の範囲内で指定を受けた道路両方あり
42条
6項道路
建築審査会の同意を得た
幅員1.8m未満の道路
(42条6項の指定を受けた42条2項道路)
両方あり

4m未満の道路には主に以上の3種類が挙げられます。

42条2項道路は幅員1.8m以上4m未満の道路のことを差し、建築物を建築する際には道路中心から2mの後退(セットバック)を行うことにより、将来的に4mの幅員を確保する必要がある道路です。

42条6項道路についても、42条2項道路と同じく再建築時にはセットバックが必要となります。

どちらも建築基準法上に最低幅員を満たしていないため「みなし道路」としての救済措置であることが注意点です。

ただし42条3項道路については上記の事情とは違います。

42条3項道路は、立地条件から将来的にも4mの道路幅員の確保ができないと判断された道路です。

道路幅員は4mではなく2.7mとする救済措置に加え、セットバックについても2mではなく1.35mまでといった緩和措置を受けています。

・河川や公園などに面した道につき、防火をはじめとして安全性の問題がない場合

・傾斜地などにあり、立地上道路の拡幅が不可能と判断された場合

・古くから建ち並ぶ街並みを保存する必要があると判断された場合

42条3項は以上のような要件を満たす必要があることからも、非常に特殊な道路種別であることがわかります。

幅員6m以上の道路

道路
種別
種別の内容公道
私道
42条1項
2号道路
土地区画整理法、都市計画法やその他の法令による道路
(開発道路)
私道から
公道
42条
4項道路
特定行政庁が、地方の気候・風土の特殊性等により
幅員6mと定めた地域の6m道路
両方あり
42条
5項道路
上記に定められた幅員6mと定めた地域において、4m未満の道路両方あり

42条1項2号道路は、開発行為によって新たに築造された道路です。

道路築造時点では民間所有の私道ですが、最終的に移管して公道となります。

原則として6m以上の道路幅員が必要ですが、安全性を確保できる場合には4mとして認められる場合もあります。

敷地内に築造する道路としては、42条1項5号道路も同じですが、開発許可を要するか否かが大きな違いです。

開発許可を要する6m(4m)以上の道路が42条1項2号道路、開発許可不要の小規模開発地内の4m以上の道路が42条1項5号道路と覚えておくとよいでしょう。

その他の道路(43条但し書き)

ここまで解説した道路のように、一見その形状を成している状況にも関わらず、建築基準法上の道路認定を受けていない道路もあります。

これらは道路ではなく「通路」と呼ばれ、あくまでも個人の敷地という認識となり、建築基準法上の接道義務を満たしていません。

そのため、上記「通路」に接道している土地は、建築物を建築することができないということになります。

建築基準法上の道路に該当していない理由は様々あります。

建築基準法が施行された後に、道路の位置指定を受けていない道や同法施行当時に家が建ち並んでいなかった道などが主な理由です。

このような場合には、43条但し書きの許可を受けることで建築が可能となる場合があります。

43条の許可には「一括同意基準」というテンプレート的な許可要件と、建築審査会による「個別協議」があり、いずれかの条件を満たすことが必要です。

43条但し書きにおいては、許可の要件次第では希望の建物が建てられない場合もあるため、このような不動産の購入は慎重に検討しましょう。


■前面道路の種類における注意点

次は、前述の前面道路種別により、不動産が受ける影響と注意点について解説します。

道路負担・セットバックの有無

道路負担とセットバックの有無には十分に留意しましょう。

建物の再建築を行う際には、道路負担およびセットバック分は敷地有効面積には含まれないためです。

例えば42条2項道路の場合、4m未満であることから再建築時には中心から2mの道路後退が必要となります。

そのため公簿上の面積よりも、実際に建築ができる範囲の敷地が小さくなる点に注意が必要です。

基本的な計算方法として、道路中心点から、敷地に向かって2m下がった地点×間口=道路負担面積

と覚えておきましょう。

容積率の制限

前面道路の幅員は道路斜線制限にも影響があります。

道路斜線制限とは、道路の対側から一定の勾配で敷地向かって引いた斜線を指し、原則としてこの斜線以下に建築物を収めなくてはなりません。

道路斜線制限には様々な緩和措置がありますが、前面道路が広いほど対側からの距離が長くなるため、受ける斜線の影響が少なくなります。

したがって、道路幅員は広いに越したことはないといえるでしょう。

接道義務を満たしているか

接道義務を満たしているかの確認は必ず行いましょう。

4m以上の建築基準法上の道路に間口が2m以上接していること


これが最低限ともいえる入口のルールですが、その要件を満たしていない不動産は意外にも多く存在するため注意が必要です。

道路自体が建築基準法上の道路ではない場合はもちろん、旗竿地などの奥まった土地の場合にはわずかに2mを切っていることもあります。

また、現況では2mあったにもかかわらず、隣地との測量の結果2mを切ってしまう可能性もあるため注意が必要です。

道路使用許可の有無

私道の場合、道路使用許可の有無についてもよく確認しておきましょう。

建物を再建築する場合においては、新たにライフラインの引込みが必要になることがあります。

その際には、基本的に公道の場合は特に許可は必要ないのですが、私道の場合には道路所有者からの道路の掘削許可が必要です。

また、道路の共有持分がない場合には道路通行許可が必要な場合もあります。

万が一、これらの許可が得られないと、予想もしなかったトラブルに発展する可能性もあるため注意が必要です。

私道の場合は、これらの許可の有無や同意が得られるか否かについてよく確認しましょう。


■不動産の前面道路の調べ方は?

これら前面道路の種類は、自身で調べる方法があります。

市役所等で調べる

市役所等で調べることが最も確実でしょう。

道路については道路課や建築指導課といった名称の部署が担当しています。

直接訪問することで、面と向かって説明を受けられるため、接道状況について詳しく知ることができるためおすすめです。

インターネットで調べる

インターネットでも調べることができます。

各自治体のホームページは近年非常に充実しているため、直接役所で調査する内容を全てホームページから得られることもあります。

道路図面においてもホームページから確認できる場合も多いですが、自治体によっては内容が不十分な場合もあります。

そのため、基本的には役所へ直接赴くことが確実といえるでしょう。


■まとめ

ここまで、不動産の前面道路の種類や注意点について解説してきました。

【本記事のまとめ】

接道義務とは、建築基準法上の4m以上の道路に間口が2m以上接していること

接道義務を満たしていなければ再建築はできない

接道義務を満たしていなくても、43条但し書きにより建築できる場合もある

道路幅員により受ける建築制限には注意が必要

最低道路幅員は4mだが、4mでも実は受けるデメリットもある

セットバックに伴う有効宅地面積は必ず事前に確認する

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